Films:Aug.2024『嘆きの天使』ほか
8月にみた映画24本
1. マイク・ニコルズ『ウルフ』
ジャック・ニコルソンが狼男に。よく似合うけど色々中途半端なままな感じで終わる変な映画。使い回しのようなモリコーネだし色々と消化不良。
2. フランク・ペリー『リサの瞳のなかに』
ボーマン船長デビュー作だそうで、触られるとキレる危なっかしい役がよく似合う。病んだ二人のボーイミーツガールの繊細な描写がキュンとする。
『泳ぐひと』しかまだ観たこと無いけどもっとソフト化してほしいな、フランク・ペリー!
3. 高畑勲『じゃりン子チエ』
大阪の底辺寄りのメチャクチャな時代をカラッとアニメ化してるのも、高畑勲ワークスの鬼クオリティと、吉本のおっちゃん達の声とで改めて観るとなんやこりゃー!っとタマげる。
にゃん子達が見事なのぶら下げてたり、アントニオの玉が日の丸弁当のくだりとかどこまでも秀悦なネタたち。
ホルモンとバクダン!キメたくなるわぁ〜〜〜!
4. マッシモ・ダラマーノ『毛皮のビーナス』
サントラとロケーションが良すぎて正直ほかが頭に入ってこない。NTRっていうの?夫の趣味にツイテユケナイ。
5. 藤田敏八『ダブルベッド』
初期藤田敏八は大好物なんだけど、荒井晴彦の湿度高めなおっさん溢れ出る脚本はどの監督になってもどうしても苦手...。
とはいえ、各女性陣はみんな可愛いし、サマーニット(とスケ乳首)とかの服装もいい。
柄本明も岸部一徳もほどよい中年のくたびれ加減が絶妙。柄本明が住んでるタンク脇の平屋、マンション脇を流れる川のロケーションも良き。
6. フランソワ・トリュフォー『逃げ去る恋』
シリーズ総集編のようなドワネル最終章で個人的にこのトホホ具合が大好きな一本。
とことんダメな男なのにドワネルクラブな女達に愛されちゃうのも、このジャン・ピエール=レオーありき。こうして人生は続いて行くのねぇ、とテーマソングのラストの入り方まで最高に沁みる。
フランスにドワネル、日本に純くん、てな具合の男子成長物語。
7. 工藤栄一『その後の仁義なき戦い』
その後の全然関係ない仁義だけど、若手と続々と惜しみ無く出てくる歴代仁義なきスター達が癖強すぎの上に主張つよつよ。
ちょいと出てくるだけのショーケンも泉谷しげるも負けずに癖強すぎて大変。
まさかのながれで松崎のしげるがデビューして泣けるし、コッテコテの全部のせの二郎ラーメン食べた気分(食べた事ないけど)
8. ペドロ・アルモドバル『ヒューマン・ボイス』
制約のあるなかでの最大限の効果で、流石のアルモドバル。
斧買うディルダ・スウィントンに不安を感じる冒頭から、お洒落すぎる部屋セット、真っ赤なセットアップと抜けのないセンスの嵐。
ヒリヒリとさせる一人芝居とワンコ🐶
9. 小津安二郎『お早よう』
玄関もお勝手も開けっぴろげな昭和の新興住宅街の人間関係。にくったらしいけど、弟君が可愛すぎる。
杉村春子出てくるとやっぱり強い。テレビ買って欲しいと駄々こねる兄弟と一億総白痴と突っぱねる笠智衆父さん。
いまならiPhoneの最新のー!って感じなのかな。より白痴化している令和の今からみても無駄のような挨拶とかいいなぁ〜タイパなんて虚しいわぁ。と、しみじみしちゃう昭和生まれのBBAです。
10. フランソワ・トリュフォー『終電車』
久しぶりに。ドヌーヴ様とドパルデューが居ると華やかな画面だけど、抑圧された占領下のパリ。地下に籠る夫とレジスタンスの二人の男たち。
戦時下でも劇場を愛する人々の解放感の演出も気持ちいいほど!安定の脚フェチショットも多数で美しい。
11. ペドロ・アルモドバル『キカ』
何重にも畳み掛けてくる作り、全員とりあえず当たり前に変態。
安定のお洒落インテリアにジャケにもなっているビクトリア・アブリルの全盛期なゴルチエの衣装がピッタリハマりすぎ。
キカだけがマトモな愛の女!ロッシ・デ・パルマは出てくるだけで存在感強くて大好き。
お髭も脇毛もセクシー!こぼれたシャンパン脇に塗る謎のおまじない。
12. ベルトラン・ブリエ『真夜中のミラージュ』
物語の始まりから変なのは序の口で、やつれてアル中で目の焦点合わないアラン・ドロン。スイス寄りのどこかみたいな村のみんな同じな家のインテリアもとても良いし、増え続けるオッサンの不条理演出も楽しい。
花屋の奥の手の届く冷蔵庫にビール!最高じゃぁ。
親友設定の教師の家でのグラタン&パンが美味しそう♡
で、オカエリナサイの自宅が洒落すぎてるうえに笑ってくれたナタリー・バイでヨカッタね。
はぁ、どれ観ても狂おしくて、ベルトラン・ブリエ!大好きだぁ。
13. 栗山富夫『釣りバカ日誌』
初めてちゃんと観た釣りバカ。西田敏行いい奴すぎる!ほのぼのさせるねぇ。
この時代はこんな平社員でも家買えたんだ!って余計なこと考えちゃう。
14. ジョセフ・フォン・スタインバーグ『嘆きの天使』
堅物先生が女芸人にちょーっと優しくされてイチコロに、そして真っ逆さまにー。なファムファタールもの。
マレーネ・ディートリヒの妖艶な美しさと脚!先生のエミール・ヤニングスの不器用キャラからコケコッコーまでの変化ぶりも壮絶で泣いちゃう。
最初の小鳥が死んじゃうあたりから不穏漂う。街のカラクリ時計も良い。
15. 栗山富夫『釣りバカ日誌2』
高知に帰ったのかたと思ったら、東京のペンシルハウスみたいんとこに住んでるスタート。
鈴木建設もビル違うし!山瀬まみいないの寂しー。原田美枝子がいれば華やかだけど浜ちゃんのWHAT???ってとこがハイライト。
Youngって書いてある赤いスウェットまた着てる。
16. ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー『ローラ』
『嘆きの天使』をファスビンダーが調理すると更なる絶望。
ライティングが綺麗過ぎるし、インテリアも素敵。もちろんバーバラ・スコラ嬢の危うく脆さのある美しさがまたよく効いている。秘書もツインピークスのルーシーみたいで可愛すぎる。
資本と自由の名のもとにあっさりと滑らかに飲み込まれてゆく絶望感。
原作も是非読まなきゃな!と思いますた。
17. 成瀬巳喜男『晩菊』
お金しか頼るモンないのよ!な杉村春子が最強すぎる。
だらしない望月優子も別方向で強い女〜!昔の男な上原謙がやってきて一瞬女になるとこから、すぐ冷めるのも泣ける。
18. フランソワ・トリュフォー『隣の女』
お隣に訳ありすぎる元カノ、ファニー・アルダンが出てくるだけで不穏な感じしちゃう。
オーララーララーララ、と動揺するけど見事に泥沼イン!ドロドロメロドラマなのにトリュフォーマジックでどこかのんびり。
19. 原田眞人『金融腐食列島 呪縛』
総会屋、ノーパンしゃぶしゃぶ、インターネット、などなど当時の熱気がムンムン。
なんだかんだでまだまだ元気あったなー日本!って感じ。オダジョー全然見つけられなかった。
20. メーサーロシュ・マールタ『ドント・クライ プリティ・ガールズ!』
ハンガリーのヒッピー映画っていうんで期待したものの、闇の少女のあの子が出ていて可愛いのと、あの時代のハンガリー若者文化ってのは興味深いけど、曲もストーリーも微妙〜で、女の子何考えてるかわかんないってか空っぽみたいでうーん。うーん。
21. ユホ・クオスマネン『コンパートメントNo.6』
90年代のロシア、モスクワからムンマルスクという街までのフィンランド留学生の彼女の2000キロの列車の旅。
相席には大外れな飲んだくれのロシア男。旅マジックって言うけど、最悪な出会いから老人&ストーブ&猫(ただしバラライカは無い)の家から少しずつ距離も縮まり、旅の目的も果たし。
そもそも旅の目的なんてそんなものだし、旅の間にあった人とはもう会わないだろうの中でのあの淡い人間関係。
人生のうちの過ぎ去る感動。崩壊後のロシア雰囲気、延々と続く白樺の森、ださめのエレポップ。どこまでも好きすぎた。
22. ジャック・ベッケル『肉体の冠』
19世紀末のパリ、印象派の時代らしい景色と抑圧された男と女達。
シモーヌ・シニョレとセルジュ・レジアニのどちらも諦めのあるような表情の中での絶対にうまく行かない愛の行く末。
23. バーバラ・ローデン『ワンダ』
今ならもれなくADHD認定されそうなワンダさん。
生きながら死んでるままの強盗犯との逃避行。この男もなかなかヤバめのバーガーは具なし派。
バッファロー66からほっこり成分抜いた絶望しかないやつで、どこまでもしんどい。
ようやく拒否したり泣いたり出来たのにきっとその先もどん底を流れていくであろうラストカット。なんじゃこれ。
これしか撮っていないの勿体無さすぎるバーバラ・ローデンさんの才能。
24. サイモン・へセラ『A day at the beach』
アル中男と姪っ子(多分娘)との雨の中のビーチへの小旅行。
お見事な飲みっぷりの泥酔具合が映像からもよーく伝わってくるびしょ濡れ映画。グレートーンのビーチに黄色い少女のレインコート、詩人の友人が乗っている赤いミニカー。小物の色も効いている。ピーター・セラーズは一瞬!