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Films:Jan.2025『ツィゴイネルワイゼン』ほか

05 February 2025

1月に観た映画19本

1. 鈴木清順『ツィゴイネルワイゼン
清順の芸術が爆発している画つくりと、モガい世界観、どこまでも美しい。
死の香りが漂い、迷宮のような話のなかで、一人だけ何もかも美味しそうに食べまくる生命感溢れる大楠道代さま。
原田芳雄も藤田敏八も大谷直子もみんな顔面も存在感も強すぎてうっとり。
それぞれのお宅もひんやりする切り通しも、オーバーツーリズムしていないひっそりな江ノ電もいまじゃ幻。
内田百閒のあの話からここまでの映画になってしまうのが流石すぎる想像力。

2.スタンリー・キューブリック『時計じかけのオレンジ
毎回見返すごとに、この素晴らしさに鳥肌。ルドヴィク"バン"の9番がここまで恐ろしく響くことってある?
隅々までキューブリックのセンスが爆発していてひれ伏す。劇中のウィンディ・カルロスのシンセサイザーの音も最強。
表面的にも若い頃、厨二的にグッときていた作品だけど、改めてみてもその内包する狂気にドキドキしてしまう。
作家先生のお宅が理想的すぎるし、その他の部屋もどれもお洒落すぎる。インターホンの音は5番。
ラストのパクっ!って大臣に食べさせて貰うシーンも好き過ぎる。懐かしの恵比寿ミルクを思い出す。

3.押井守『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊
2501で、ついに未来に追いついた!何度観てもこの世界観たまらん。
高校生の頃に観て以来ずーっと魅了されている、押井版のこのどしっと重量級の少佐がやっぱりいいな。
去年パトレイバーなど見返して千葉繁にぞっこんだったから、ゴミ回収の男がそうだったのが新しい気づき。
光学迷彩や水没した都市、中華化しているカオスな街。
どこまでも後世に与えた影響大きすぎるし、大人になって見返すとたくさんのオマージュにも気づいて楽しめた。

4.山田洋次『男はつらいよ ぼくの叔父さん
寅さんより満男の青春。寅さんのテンションもギャグも無茶も少ないなぁ、と思っていたら体調が悪かったらしい?そして世代交代なのね。
国民的美少女ゴクミとの淡い恋と吉野遺跡。途中の明らかに怪しい笹野高史にアァーされなくてヨカッタ。

5.ジュリオ・クエスティ『殺しを呼ぶ卵
さすがはイタリア!お洒落サイケなオープニングからわくわく。テンポよく変なシーン続々。
まっとうそうなトランティにゃん子の変態趣味からの転落。
Candyのエヴァちゃん可愛すぎるし、便利な給餌機活用されすぎててちょっと卵もチキンも当分食べる気無くすやつ。
出てきた瞬間コイツ!って日本人的に思っちゃうモンダイーニ。

6.マウリオ・フランコ・トッソ『サミチャイ、牛飼いの祈り』
長回しで静かなペルー映画。あまりにも過酷な暮らしと、家族がそれぞれ旅立ってゆき、大切な牛ちゃんも...涙
お父さんのこの先がしあわせであってほしいけど、そんな未来が見えなそうでつらい。わが家のまわり、ペルー人多いけど同じペルー人でもだいぶ違うな。

7.サイモン・スタホ『ワイルド・サイド
タイで入れたお揃いの蛇タトゥーが切なすぎる。男二人の友情と変わってゆくお互いの事情と理想。
いかにもアイスランドなヒルマル・オルン〜の音楽が合ってないような気がするし、色味とかその他懐かしさ溢れてる。マッツのスズキ車。

8.ロルフ・デ・ヒーア『悪い子バビー
35年間監禁、虐待されてたおぢが世界に放たれたら...。前半ヘヴィーすぎるあれこれ、猫好きには終始キツい。
世界はつらいよ、からのいきなりのバンドマン開花するのなにこれ。
出会った人達からの影響がダイレクトに出てくるピュアさ故の振り切れ不謹慎さがなかなか。
何もないところから見た世界、っていう斬新切り口。監督の主張強めにみっちり盛り込まれた世界。
オーストラリアのピザ食べたい。

9.鈴木清順『陽炎座
大正浪漫二作目は松田優作×泉鏡花。鬼灯の音や魂になぞらえて、有名なあのシーンなどなど、グロ和風耽美な世界観の構築が美しすぎる。
清順の美意識、この世とあの世、夢うつつをここまで映像化してしまう芸術世界にうっとり。

10.押井守『イノセンス
押井ワークスブームで見返してる。ニュルニュルのCGと人形たち、ギラギラの街並みや密度高めの建物なんかのデザインまで気合い入りまくり、台詞も詰まりまくりでみっちり楽しめる。
少佐とバトーの再開がぐっとくるし、ベストはかけても下モロ出しな人形少佐もグッとくる。漫画読みたいな。

11.L.Q.ジョーンズ『少年と犬
2024年の過去の未来。
キンザザか北斗の拳か、みたいな砂漠地上世界とポップコーン食べたがるワンコ。
少年っていうか青年だけど、まんまと地下世界に連れて行かれた先の白塗りな人たち。次のマイケルは薄笑いしないやつ、ってとこ良かった。
で、あのブラックなラストとおっさん笑いのワンコとで最高すぎた。

12.ダーレン・アロノフスキー『π』
キレッキレのデビュー作。モノクロとあの音楽でどうしたってかっこういい画面に仕上がりまくってくるドラッギーさ。
数学とその他陰謀論的なものたちにズブズブとハマってゆく神経症的なのが病んでていいねぇ〜!

13.鈴木清順『夢二
すでに巨大化しつつあるジュリー夢二...は置いといても、そんなことどうでも良くなるほどの美しい画面作りの浪漫三部作ラスト。
金沢舞台の能登弁が良き。宮崎ますみがいちばん夢二の絵の中に出てきそうな顔面で好きすぎるし、毬谷友子も広田レオナも危うくて美しすぎる〜。
長谷川和彦の鎌持ったおっさんが異色でまた怖い。
あの曲が響くなかでのエロティックで赤い清順の描く世界は唯一無二の素晴らしさで溺れる。

14.溝口健二『噂の女
京都の置屋の田中絹代母と、久我ちゃん娘の母娘で同じ男を取り合うけど、この医師男がなかなかのクズっぷり。
京都の置屋さんの裏側と、なんだかんだで女将さんへの道にしっくりいきそうな娘と行く先のない薄雲さんの妹。
久我ちゃんの洋装も、田中絹代のATフィールドみたいな帯などなどのお着物も素敵。

15.ジョナサン・グレイザー『関心領域
理想的な素敵な我が家、お庭も広々でプールもついている。
冷たくビシッとシンメトリーな構図がつづくスタイリッシュな映像で紡がれる家族の日々。
壁の向こうはアウシュビッツ。理想の暮らしの向こうで不穏な音が常に鳴り響く恐ろしさ。無関心という罪。
ザンドラ・ヒュラーってどの映画みても存在感強いなあ。
音楽は今回もミカチュ。

16.ミケーレ・マッシモ・タランティーニ『エロチカ・ポリス
おバカ&おドジのお色気婦人警官。出てくるみんなコミカル過ぎておもろい。
OPのパヤパヤな音楽からしてワクワクするし、展開よめるドタバタにお色気に、鳥ちゃんまで出てきてなんか忙しすぎる。
ローマ市内のカーチェイスもとても贅沢な景色でどこまでも楽しかった〜!

17.ロマン・ポランスキー『オフィサー・アンド・スパイ
個人的に"失われた時を求めて“を読んでいてドレフュス事件が気になりすぎるところで、ポランスキーのこちら。
さらには、ドレフュスがルイ・ガレルにメルヴィル・プポー♡フランスの、はたまたユダヤ人差別の根深すぎる問題と真っ黒な国家権力を敵に挑むピカールさん、がんばる。
流石のポランスキーだけあって変な邦題だしすっかり見逃していた今作だけど、裁判のシーンや兵舎、その他の建物内の撮り方から細やかなところまで綺麗で汚くて良き。

18.フリーヌル・パルマソン『ゴッドランド
デンマークから敢えて厳しい道のりで教会建設のために派遣される牧師のお話。
木も生えない過酷なアイスランドにて、割と人間くささどころかわがままチンな牧師サン。
そんな諸行無常か、自然に還るラストはなかなか。音楽のクレジットのAlex Zhang Hungtaiの名前に一番テンションあがったわ!

19.アレックス・ファン・ヴァーメルダム『No.10
途中から何の映画観ていたんだっけ?ってなる。痛〜い!ってところからの怒涛展開からラストの排出!!!
このシーンがやりたかったのね、と納得のアイロニー。
オランダの物件や隣が工事中のオシャンホテルにドイツの小屋にとインテリアも好み。
リューベン・オストルンドに似た嫌〜な感じのヨーロッパ的な大好物なやつでした。

Category: Movie

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2025.02.05 12:00 PM