Films: Mar.2023『インフル病みのペトロフ家』ほか
今月もなんだか夜は眠くなっちゃってあんまり映画見られなかった18本。(仕事頑張ってると思いたい)
それでも新作系からずっと観返したかった懐かし90年代ものにクラシックにとあれこれ。
キリル・セレブレンニコフ『インフル病みのペトロフ家』
ソビエトな子ども時代のノスタルジーと、インフルエンザが蔓延する現代とを行ったり来たり、
熱にうなされてどこまでが現実なのか、ふわふわ彷徨う悪夢世界とノスタルジーが入り混じる演出が素晴らしい。
そして、コロナ、ウクライナ侵攻以前に軟禁状態で撮ったっていうからなんかすごい。
この国特有の大変さの中で生きている人たちのアナーキーな叫び。邦訳はされていないらしい原作も読んでみたい
同監督の『LETO』
ソ連時代の伝説のバンドKINO、ロシア人には馴染み深いヴィクトル・ツォイだそうだけど、日本人がみるとどうしても長渕がちらついちゃう...
ZooParkは初めて知ったので是非聴いてみよう!どちらの二人も短命で、三角関係でタイトル通りに圧政のなかでも駆け抜けてる若者たちってのは胸熱。
あのアニメーションやPVのノリは10年前くらいならもっと好きになってた気もするスパイク・ジョーンズ的雰囲気ありでくすぐったすぎるかも。
お初のアン・ホイ『望郷』
アンディ・ラウのデビューとのことで若い!ベトナム戦争後のダナンを舞台にかなりエグい現実。
解放されたからといって全然幸福でないベトナム庶民の裏側はかなりヘビー。
香港映画だから中国語だし日本人カメラマン芥川さんのニホンゴが無茶苦茶で気になりすぎた。
『黄金時代』
激動の時代を生きた女性作家の伝記、蕭紅のことは全く知りませんでしたがなんとなーく林芙美子的なのを期待しつつもあくまで伝記なのでご本人の文章が少ないのが残念。
あちこちの場所で落ち着く事もなく、時代と政治からは離れてあくまでも自分の文章を書いていた女性の強さみたいなのはかっこいい。周りの知人たちの証言でのカメラ目線。タン・ウェイのロリ顔におさげ髪、チャイナ服がたまらなく素敵。
サム・メンデス『1917』
伝令を伝えるミッションをワンカットでお届け!と、やたらと気合い入ってるしこっちも身構えちゃう。
なかなかドイツ兵を殺せないところとか迷いがありつつも、真っ直ぐ進む。スコの内面のストーリーを出さないのも、ラストの写真のみでグッとさせられる。
桜の木とか、照明弾に照らされる廃墟とか、ドラマチックな映像とそこかしこに転がっている死体たちのさりげなさも全てさりげないが故に余計にむごい。Kingkruleみたいなジョージ・マッケイ君、イイね!
スティーヴン・スピルバーグ『フェイブルマンズ』
スピルバーグの自伝的映画との事で、子供時代に初めて観た映画で衝突に夢中になり再現しちゃうところからして天才。
藝術家肌の母と技術屋畑の父さんと、少しずつ出会う人とパワーアップしてゆくカメラや機材でその辺りは恵まれまくってるけど、徐々に離れてゆく家族のゆるやかな哀しみ。
PDもミシェル・ウィリアムズも危ういけど自分の世界を大切に生きてるような大人を演じてて素晴らしい!そして最後にインパクトありすぎドーンなリンチ・ジョン・フォードからの地平線できれーに終わってキュン。
ダニエルズ『エブリシング・エブリウェア・オールアットワンス』
今年の超話題作、『スイス・アーミーマン』(大好き)の彼らがアカデミー賞って...と不安でしかなかったけど、
小学生男子的おバカも健在で、マルチバースな世界のなかの私とベーグルな虚無と戦う母!優しさ代表な夫がグーニーズだったり、何からなにまでカオスなのをしっかりまるっと収まるシンプルな愛の形。このバカバカしさこそ世界って感じと、現代人の悩みも全部のせでよくもまぁ、ここまで纏めるのは素晴らしすぎるではないかー!
カート・ヴォネガットに大いに影響受けているというのも納得の世界観。「猫のゆりかご」のプロジェクト、頓挫してしまったらしいけどいつかやって欲しいし、アカデミー賞獲った今なら期待しても良さそう?
エンキ・ビラル『ティコ・ムーン』
ずっと観たいみたいと思っていたら、アマプラに。しかし何故か吹き替えのみ...
赤髪ジュリー・デルピーの透明感、豪華なフランス俳優陣に、エンキ・ビラルのフレンチSF世界がたまらん。さらにB.B.ソングでどこまでもフレンチしてる。シネマライズだかクイントだかに観に行った懐かしき思い出。
レオス・カラックスの新作は期待していたけど...個人的にこれじゃなかった。残念。
5月にみた映画16本
1. レオス・カラックス『アネット』
2. キリル・セレブレンニコフ『インフル病みのペトロフ家』
3. 木下恵介『大曽根家の朝』
4. サム・メンデス『1917』
5. シドニー・ルメット『セルピコ』
6. キリル・セレブレンニコフ『LETO』
7. 田中徳三『鯨神』
8. アン・ホイ『望郷』(未ソフト化/U-NEXT)
9. アン・ホイ『黄金時代』(未ソフト化/U-NEXT)
10. エレノア・コッポラ『ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録』
11. 鈴木清順『けものの眠り』
12. ダニエルズ『エブリシング・エブリウェア・オールアットワンス』
13. スティーヴン・スピルバーグ『フェイブルマンズ』
14. エンキ・ビラル『ティコ・ムーン』
15. 溝口健二『雪夫人絵図』
16. ジャン・ベッケル『天国で殺しましょう』