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Films:May.2025『幸福なラザロ』ほか

01 June 2025

5月に観た映画16本

1.ジョセフ・フォン・スタンバーグ『モロッコ
会った瞬間惚れてしまうのも納得のディートリヒの妖艶な美しさと立ち居振る舞い。
ハイヒールがあんなにも美しいんだなと、同性ながらも惚れてしまう。
キザ過ぎるゲイリー・クーパーも様になり過ぎる格好良さだし、映画の憧れ詰め込んだ感じで素敵ぃ。
モロッコの地で出会ってしまったがための愛の行方と砂漠とヤギ。見送るアドルフ・マンジューもいい男が過ぎる。

2/キリル・セレブレンニコフ『スチューデント
厨二の拗らせ先がキリスト原理主義だったら...な、台詞がほぼ聖書。無敵な奴だ...
いい感じにむかつく白人少年な彼のキレた感じと、唯一の友のような足の長さの違うイケメンないじめられっ子の彼との
勘違い行き違いな関係とかまぁ大変だわ。宗教上の都合って言葉がここまでも行くだなんてびっくら。
ブラックユーモア効きすぎ。ロシアメタルな音楽まで最高好きな感じでした。キリル・セレブレニコフ、恐ろしい監督!

3.中村登『波の塔
下諏訪から下部温泉などいってみたさ過ぎる温泉場の数々で松本清張的名所を押さえつつも、都内のあちこちも昭和は素敵ねぇー。
和光みたいなとこでパッフェやニューグランドでのお茶。
ネコちゃんのファムファタル的な良さがたまらないし美しー!南原宏治のわるわるなのも良き。
温泉マークで聞こえる汽笛でスイッチオン!するのは夜の片鰭よりこちらが先にあったのね。

4.アリーチェ・ロルバケル『幸福なラザロ
昔を描いたイタリア映画かと思いきや、携帯電話を持った地主息子の登場で???となり、
違法に現代に小作人を使っていた田舎の出来事。
厳しいなかでもほのぼの暮らしていた人々の行先は、これまた違法な線路脇でのスクワット暮らし。
はてさて、どこで何が幸せなのかな。と思わせながらもピュア100%なラザロは時を超えて動物たちと会話するようにして旅立つラストに鳥肌。
あの金髪女性は監督さんのお姉さんなのねー!
イタリアが、世界が抱えている暗部をえぐるような寓話的世界。
古典的要素を押さえながらの静かに美しい映画。素晴らしいです。

5.木下恵介『衝動殺人 息子よ
豪華な役者、製作陣!がっつり社会派。
不条理に飲み込まれずに命を削って挑む若山富三郎とデコちゃん夫婦の姿に胸を打たれる。

6.山田洋次『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく
木の実ナナのマドンナ回で、なんというか強い。
武田鉄矢も加わって味濃いめな今作。
浅草SKDが舞台で、物語的にはそんなに捻りもないけどもとにかくあの昭和な踊りや歌がすんごい。

7.ジョン・セイルズ『希望の街
なめらかすぎる場面展開の群像劇。
人種問題に汚職に悪事と嘘と欺瞞だらけのドロドロな街。
誰も幸せになれなそうなのは生まれた街を呪うしかない世の中って感じのUSA国家を歌わされるほぼ黒人の子どもたちの図がしんどい。
冤罪すぎるゲイ疑惑の先生が一番不憫。
電気屋の前でトーシバヨシダーって言っている彼のリフレインなラストシーン。

8.小林正樹『怪談
大変気合の入った怪談集。
セットが前衛的で逆にウテナとか始まりそうな耽美さ。
しっかりと間合いをとったゆったりさが雅やかな日本の美、と言った具合で眼福。
子供の頃に小泉八雲の家に行って読んで怖すぎた耳なし芳一も今見るといくらなんでもうっかりさん!既に霊界入りしている丹羽哲郎。
ラストの茶碗の中の人とかもネタみたいだけど結果とても好きな話。

9.ロバート・レッドフォード『普通の人々
普通に見える家族の蓋を開けてみたらボロボロ、バラバラな関係が終始重苦しい。
ナイーブすぎる息子のティモシー・ハットンの壊れそうな青年役がヒリヒリするも、
一番のヒリヒリ元な母さんのあの感じが救われない退場と男二人のラストでなかなか。

10.木下恵介『この天の虹
八幡製鉄所は日本の希望、てな感じのキラキラもくもくな町中一帯をぐるり見渡す大パノラマ映画。
久我チャンの縁談のドタバタな人間関係に、水上イベントの貧乏臭さがジャパンすぎてシュンとする。
ピクニックに最適な貯水地とモダン建築な寮が行ってみたさすぎる!と思ったら廃墟になってるらしい。世界遺産。

11.マイク・フラナガン『ドクター・スリープ』
シャイニングの続編、とするには前監督が亡霊で怒りそうな別物。
ホテルでのあれこれも無理矢理な感じのそっくりさん祭り、君もシャイニング!ってか。
スティーブン・キングの原作を読んでいないから何も言えないけど、キューブリックのセンスが異常だったのがよーくわかった。

12.野村芳太郎『でっかいでっかい野郎
大体がトラちゃんなんだけど、色々と弱め。飲んだくれてグダグダのままもやっと終わっちゃった。

13.ペドロ・アルモドバル『ザ・ルーム・ネクスト・ドア
近年特にシリアスな作風のアルモドバルだけど、隅々まで完璧な美しさ。
主演の二人の円熟の演技もさすがすぎる。
衣装とメイクがここまで素敵なうえに、いつも通りのセンス良すぎ物件とインテリアの数々で描かれる女二人が死と向き合うなか
二人の元男でもあったジョン・タトゥーロの心配ごとは気候変動。
NYのマーサ寝室に、ルイーズ・ブルジョワ"地獄から帰ってきたところ〜"のがあって
去年みたばかりだったのでおぉぉ、っとなったけど彼女の部屋にぴったり。
森のリビングにはホッパー。ワイエスの構図にとアメリカを捉えるアルモドバル。

14.イーサン・コーエン『ドライブアウェイ・ドールズ
最初から最後までどうしようもない弟コーエンと奥様との作品。
ヘンリー・ジェイムズをそれぞれが読んでいるんだけど、そのへんの文脈がよく解らなかった。
99年のファッションってこんなだっけー?とか思いながらもダイクなマーガレット・クアリーちゃんは可愛いかった。

15.アレクサンダー・ペイン『ホールドオーバーズ
アメリカンニューシネマ愛溢れる。
反抗期な問題児と厳しい嫌われ者の先生というありがちな関係だけど、
学食のカーちゃんも加わってみんながみんな問題や悲しみを抱えている人生。
クリスマスの家庭的な料理がいいなぁ。孤独で問題ある同士だからこその距離感と思いやりがしんみり。
"自省録"の詰まった箱。何年か前に読んだけど、また読みたくなった。

16.山田洋次『ふけば飛ぶよな男だが
山田洋次×森崎東脚本で間違いなくええやつ。緑魔子の田舎娘で幸薄なクリスチャン子が可愛すぎる。
神戸のアパルトマンのエクストリーム壁破壊からの舎弟入りや有島一郎の丘の上な洋風ハウスも素敵だなぁ。
素朴すぎる二人の哀しい恋の物語。別れの港での涙。
ミヤコ蝶々みたいなBBAになりてぇ。

Category: 映画

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2025.06.01 12:00 PM