monaminami

Films: Nov.2023『潮騒』ほか

05 December 2023

11月にみた映画14本

1. フィリップ・ラブロ『潮騒
偶然と暴力。そんな運命を受け止めて生きてる〜って感じの人々。
先が全然読めないのも、ブツ切りされまくる場面も、謎のカンフー男が暴れるのも(可愛すぎるお菓子屋さんとばーちゃん、迷わず撃つ!のおっさん)、朝に窓から迷い込む鴎も、窓からばら撒かれる原稿もどれも偶然ぐうぜんと、イヴ・モンタンのやれやれ顔でやられるとたまらんなぁ。
カセット爆音で流すロメオとジュリエットも、カセットの背でトントン叩き貼り付けるでかいキャサリン・ロスの写真も、卑猥な絵の描かれた海の家もどこまでもが最高のシーン。

2. アレクサンダー・ロックウェル『イン・ザ・スープ
玄関にはストーカーのポスター(欲しい)。
ゴダールにニーチェにドストエフスキーにトルストイに、と引用も楽しい監督になりたいボーイなブシェミ。ナイーブなこういう青年ぴったり過ぎてキュンとする。
シーモア・カッセルの怪しすぎる存在感も絶大で、二人の過ごす時間の輝きよ。ラストまでグッとくる。

3. ニキータ・ミハルコフ『サンストローク ロマノフ王朝の滅亡
失われた白いロシアの耀しき思い出の日々のキラキラとしたカラフルな回想と、グレー色に染まった赤いロシアの対比がおそロシア。
思い出の中の移ろいゆく時間の描き方はさすが、ニキータ・ミハルコフな世界でとても好き。
将校時代に出会った少年との再会と、それぞれの見送る目...それにしたってこの国の人達はだいたいいつも激動な時代を生きてて大変だな。

4. ロバート・ダウニー『パトニー・スウォープ
ロバート・ダウニー父さん!真っ黒クロのダークすぎるのすごいなー。
ウディ・アレンどころじゃない、振り切れまくりのブラック・ジョークでキレ良すぎで泣いちゃう。
そしてやたらスタイリッシュな映像の数々。出来上がってくるCM観る試写室とスキンヘッドに映り込む映像とか、最高。

5. ニコラス・ジュスネール『扉の影に誰かいる
OPはフランス映画だけど始まったらイギリス。
出てきた瞬間から怪しいサイコ野郎感ひしひしのアンソニー・パーキンスのきもかっこいいのと、記憶喪失な渋かっこいいチャールズ・ブロンソンのほぼ室内劇で見応えたっぷり。
新世界よりが流れる度にドキドキしちゃう、サスペンス仕立ても楽しい。

6. 小津安二郎『戸田家の兄弟
ブルジョワ一家の父を失った老母と未婚の娘だけが行く宛なく兄弟の家をたらい回しにされ、一周忌で天津から帰ってきた佐分利信兄が激おこ!な気まず〜い法事の雰囲気とか、兄嫁三宅邦子のピリピリいびりとか、なかなか胃が痛くなる。
ある意味まっすぐすぎな佐分利信のテレに激萌えラスト。その後の女二人はちょっと心配よね...働くの怒られるご身分になってみたいわぁ〜!

7. ジェームズ・アイヴォリー『眺めのいい部屋
どこまでも理想的な英国の風景。
フィレンツェでの出会いと、ポピーと麦畑でのキスシーン。なんとまぁロマンティックなこと!
聖なる湖での男三人の水浴びシーンのワクワクさ、不器用な文学青年ダニエル・デイ・ルイスに激萌え。そして春の嵐のようななかでの旅立ち、ソローだけ持って行くお父さん、みんな素敵〜。

8. 原田眞人『バウンスKogals
チョーど真ん中の世代BBAなので、今観るとひぇーっと、ホラーすら感じるあの空気。危うい時代というかすでにぶっ壊れてたなぁ。
でもまあオヂサンからみたJKって感じだけど。おばちゃんの知ってる渋谷の風景、朝のあの感じ。タワーレコード。佐藤康恵ちゃん、すきだったなー。

9. 清水宏『みかへりの塔
実際にあった感化院の話を、その場所でロケしているらしくて、戦前にしてはちょっと特殊な教育なんだろうな、と思いながらもみんなちゃんとしてるように見えちゃう。
帝愛ばりの水を引く工事とか、今じゃ児童搾取とか怒られそうだから良い悪いは別として、時代は変わりまくるね。としみじみ。

10. ルキノ・ヴィスコンティ『ルートヴィヒ完全復元版
お久しぶりに鑑賞。あぁ、素晴らしき哉!
退廃の美の王をヘルムート・バーガーで、ヴィスコンティが撮るんだもの最高に決まってる。ピュアすぎる藝術家肌のルートヴィヒ2世の哀しい生涯だけども、後世の我々にはワーグナーやバイロイト、御伽話のような城など遺したのは偉大すぎる。
イケメンズに囲まれた暮らしも羨ましい!
今の我が国にもすこしはこういう美意識ある偉い人が欲しいものだわー。

11. 島耕二『銀座カンカン娘
デコちゃんも笠置シヅ子もキュート!
カラッと元気でコミカルミュージカルから古今亭志ん生の落語で〆る、江戸っ子ー!な芸が詰まってて楽しい。わんぽも可愛い。野っ原な世田谷?や銀座や迎賓館も外国みたいでお洒落〜

12. ギャスパー ・ノエ『アレックス STRAIGHT CUT
逆時系列だからこそ、ほほー!っとなった元作品をあえての時系列で再構築のこちら。
ワクワク、キャッキャなところから、ドロドロバイオレンス&ゲイゲイしているぐるぐる真っ赤っか画面のドラッギーさで終わるのもなかなか。
ゲイすら欲情しちゃうモニカ・ベルッチのヌーディーすぎるあのドレス姿は罪深い。

13. ラース・フォン・トリアー『イディオッツ
すごい久しぶりに。これも配信されるようになったとは、いやはや(^q^)
善意と偏見を浮き彫りにというより、さらにその上いく感じのラース・フォン・トリアー。
ドグマな時代の生々しい映像で余計にくるものがある。今でも障害者やその他、"びょうどうなしゃかい"を目指しまくってる世界だけど、優しい顔や表現で蓋しまくるより、こんな毒や愚かさも忘れずにいたい。

14. 溝口健二『西鶴一代女
女の人権なんてない時代に、ものすごい振れ幅の人生送る壮絶な女の半生。田中絹代様の素晴らしい演技と絵巻物のような画面の流れるような溝口映画の美しさを堪能。
モノクロの美しい世界だけど、お着物とかカラーで見ねみたいなぁとも思ったり。

Category: Movie, 映画

Tags: 

2023.12.05 12:00 PM