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Films: June.2023『醜い奴、汚い奴、悪い奴』ほか

02 July 2023
202306_Films

6月に観た映画16本を振り返りブログ。

何よりも強烈だったのが、エットーレ・スコラ『醜い奴、汚い奴、悪い奴
こ、これは...!戦後イタリアの貧民街のカオスすぎる家族の図。皆が眠るギッチギチの部屋からはじまり、そして終わる。
生命力強すぎ、さすがな感じです。
家族全員キャラ濃すぎて泣きながら観てた。おばあちゃんのこと年金とか言ってるのなんて序ノ口。洗礼式からロンドンみたい(爆)と言うどうみてもインドな、トラック無理乗っかりから最後の晩餐、そして復活、復讐、と畳み込むエピソードに参った。
女性陣のわがままボディと髭と腋毛に生命力ビンビンな強さにクラクラした。

ようやく観はじめたシャンタル・アケルマン。
私、あなた、彼、彼女
冒頭からいきなり孤独と時間を持て余したような28日間、砂糖しか食べてないのとか、途中から裸族で過ごすあけっぴろげのご本人の熱演。
部屋からの開放感はあるけど、彼との距離感と軽やかな関係のロードムーヴィーのような移動も地に足ついてない感じがそわそわする。そして(元)彼女との濃密だけど、どこか空々しい営みと、どこまでも孤独が漂う超個人的な時間。
バターにヌテラ重ね塗りや、ラストのスタッフ?映り込みが怖い。
ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地
完璧にこなしている風のシングルマザーの3日間。
生活の細かいところを覗いて、身近に感じさせながらも徐々にほろこび、ついに...なあっけなさまで、ゾクゾクさせられた。デルフィーヌ・セイリグの虚無な演技も素晴らしい!
細かなエピソードがきっとみんな身に覚えがあるようなやつばかりで、共感させているようでいて、全てのものを突き放したようなドライな空気感もピリピリして、ヨーロッパの冬の朝の空気の匂いまでしてきそう。

今のところ何を観ても傑作揃いな清水宏『小原庄助さん
会津磐梯山の歌の小原庄助さんな戦後没落の物語でどこかヴィスコンティっぽい。
どこまでもいい人で、常にアルコール濃度高めでどこか現実逃避。家の中の撮り方や田畑の風景までずーっと日本原風景な景色と梅雨時のしっとり感まで素晴らしい。
ダンス化してゆく戦後の若者と柔道三段が活かされまくるところからのラストの線路シーンに続く地平線で「始」!で泣くわ。
失われまくってるこのユーモア感覚、大切にしたいなー。マーガレット虹子とロバちゃん最高。

鈴木清順もアマプラにあったのであれこれと。
悪太郎
女学生二人が出てきて隠れるところからキュンとさせる!悪太郎どころか良い男すぎる山内賢。
初めて下宿に雨宿りする風景と雨、京都のシーンも、どれも美しいなぁ。校長先生の餞別のお言葉も沁みる。
儚い恋とその終わりと大人への道とできっともっと良い男になりそうな気しかしない。
すべてが狂ってる
戦中の親と戦後の子との世代の断層。全てが狂ってると言うしかない混乱と、それでもなんか元気だなぁー、と令和から見ると思っちゃう昭和の新宿。
そして葉山の賑わい。ところどころでやっぱり狂ってる清順節。禰津良子が美人ー!
春婦傳
支那の奥まで来てのギリギリの娼婦、野川由美子とまっつぐな若い兵士川地民夫。
生きたい、愛したいな欲が叶わぬ爆発なラストまで塀の中を行ったり来たりするカメラとで見事なキレっぷり。

フランチシェク・ヴラーチル『マルケータ・ラザローヴァ
お初のチェコヌーヴェル・ヴァーグ。アンドレイ・ルブリョフや七人の侍を引き合いに出されるのもよくわかる沼感。
登場人物多め、台詞多めで時々ついて行けてなかったりもしたけど。俺の羊〜!ゴロンゴロンで泣いた。
泥臭い男と、魔女と聖女と母ちゃんたち女との対比や壮大で魔物のような自然や東欧っぽい狼等々の撮り方もキレー。

最近デビューしたパトレイバー。アニメ版も絶賛鑑賞中。
で、押井守『機動警察パトレイバー THE MOVIE
冒頭のビルから飛び降りる図がすでに攻殻の予感。今更ながらにパトレイバーを追ってます!そしてその鬼クオリティにひれ伏すのみ。
この劇場版はさらにため息ものな作り込み。物語はもちろん、作画の奥行き、各セットでの書込み、光の演出にラストの朝日!改めて押井守の凄さを堪能。そして観るたびにたまらなく好きになる隊長。

6月にみた映画
1. アンドレ・デシネ『夜の子供たち
2. ミケランジェロ・アントニオーニ『愛と殺意
3. エットーレ・スコラ『醜い奴、汚い奴、悪い奴
4. シャンタル・アケルマン『私、あなた、彼、彼女
5. シャンタル・アケルマン『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地
6. トッド・ヘインズ『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド
7. 清水宏『小原庄助さん
8. アキ・カウリスマキ『レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う
9. ジョルジュ・ランバン『白痴
10. 押井守『機動警察パトレイバー THE MOVIE
11. 鈴木清順『悪太郎
12. フランチシェク・ヴラーチル『マルケータ・ラザローヴァ
13. 鈴木清順『すべてが狂ってる
14. 鈴木清順『春婦傳
15. ジュゼッペ・パトローニ・グリッフィ『スキャンダル・愛の罠
16. 幾原邦彦『Re:Cycle of the PENGUINDRUM[後編]僕は君を愛してる』 
17. ラズロ・ベネディク『セールスマンの死
18. スティーヴン・スピルバーグ『続・激突!カージャック

Category: Movie

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2023.07.02 12:00 PM