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Films: Aug.2023『殺人捜査』ほか

01 September 2023

8月に観た映画21本を振り返り。

1. イヴ・アレグレ『美しき小さな浜辺
出てくるや否やずぶ濡れで子犬みたいなジェラール・フィリップ。
訳あり感プンプン漂わせながらのサスペンス調ななかに宿屋のじーさまの立ち位置が最高。自分の昔に重ねる少年や何故か足が向いてしまった自分が建てた居場所の小屋、大体雨な海辺の街が美しくもあり、残酷。バタまみれのパンがうまそう。

2. ジョナサン・デミ『クレイジー・ママ
ロジャー・コーマン×ジョナサン・デミの逆怒りの葡萄なキレたおんなたち。LAで生まれ育った娘の脳みそ溶けてそうな感じも、カジノで仲間入りするばーさんのお洒落も好き。

3. ラブ・ディアス『北 ノルテ -歴史の終わり』(未ソフト化)
立ち去った女でもキリスト教的受難と苦しみを描いていたけど、こちらも。
ドストエフスキーの罪と罰を下敷きに現代フィリピンを描くいうことで、ラスコーリニコフがより罪を重ねるし、デブっ腹にわんこにで胸糞。後半30分でアピチャッポンみたくなる。

4. ピエール・ガスパール=ユイ『恋ひとすじに
口パクがズレまくるロミー・シュナイダーとアラン・ドロンの顔面強すぎるお二人を愛でるメロドラマ。
それ以上でもなく以下でもない。イケイケだった頃のあの国の雰囲気は好きすぎる。

5. ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー『ベロニカ・フォスのあこがれ
10年ぶりくらいの鑑賞。戦後ドイツの光と影を落ち目の女優に絡めて、あまりにも目の覚めるような美しい映像とともにお届けしてくれるファスビンダー。
映画は光の影よ、と言わせる言葉どおりの光と影を魅せる。
溝呂木先生でも出てきそうな真っ白な精神病院の食堂にはミラーボールでさらにキラキラしてて参った。センスの嵐。

6. プレストン・スタージェス『モーガンズ・クリークの奇跡
ツッコミどころ満載なのとプロパガンダ的な要素は時代のものとして置いといて、ものすごい勢いとノリで楽しめる。役者陣の巧さとずっこけっぷりに感服!

7. 増村保造『赤い天使
戦争の最前線を舞台に戦争自体のエグさはもちろんのこと、どさくさにあれこれ求める男達に応えてくれちゃう若尾文子が大変。
そんな中でのプレイも変態した後の軍医・芦田伸介との恋の流れもたまらん〜。最後の最後まで壮絶。

8. ジョン・カーペンター『マウス・オブ・マッドネス
サム・ニールがハマりすぎているラブクラフトの作品が下敷きだそうな、最高ホラー。
冒頭の精神病棟でかかるカーペンターズからしてアガる!
終わり方、あの音楽ままでどこまでもお手本のようによく出来てる流石のカーペンター。

9. ハル・アシュビー『ハロルドとモード
10年ぶりの再鑑賞。自殺願望のある顔真っ白な青年と破天荒おばあちゃんとの出会い。
枠も柵もいらんとパンクに反抗して生きる姿に魅せられ、次第に血色を戻すハロルド。80歳で潔く逝くモードのような生き様も電車ハウスも可愛すぎて憧れちゃう。俺の黒歴史バイバイ!とバンジョーを弾く彼の足取り。

10. 小津安二郎『麦秋
麦の穂も垂れる実りの秋の、離れ離れになったけどまた会えるよね、とそれぞれを思いやる家族の言葉少なめの優しすぎる世界。
女学生の名残の原節子と淡島千景の"ねーえぇーー"ってのが可愛いすぎた!ぷんぷんする笠智衆兄さんも、ほのぼの老夫婦な東山千栄子と菅井一郎の博物館デートも良すぎる。
お茶の水のカフェーでの気配からの原節子の確信の決意とかグッとくる上に、あんぱん杉村春子はやっぱり最高の存在。

11. エリオ・ペトリ『殺人捜査
権力を皮肉りまくる不条理サスペンス。スキの無さすぎる圧を出しまくるジャン・マリア・ヴォランテ。
建築物、インテリア、衣装もメイクもお洒落すぎるし、モリコーネの音楽もキマってて最高。
当たり前だけどイタリアのコーヒーディスペンサーはエスプレッソしか出ないのね。

12. 山田洋次『男はつらいよ 寅次郎 恋やつれ
再び、超天然美女の小百合さん登場。前振りの公開失恋から切ない寅ちゃん。
不器用な宮口精二父ちゃん(萌)にナポレオンならぬワシントンで酔っ払って絡める寅ちゃんさすがやー。
で、大島に降り立つと思いきや島根の海岸でニクいラスト

13. サルヴァトーレ・サンペリ『スキャンダル
外は戦争、中の家族も崩壊。ぐいぐいとお見事な技で奥様を骨抜きにしてゆくフランコ・ネロの悪男っぷりと、壊れてゆく奥様リザ・ガストーニも、春川ますみみたいなアンドレア・フォレオルの豊満ボディも見どころ。
ラストにかけての空襲と家庭崩壊の炎上演出がすんばらしい!

14. 降旗康男『遺産相続
ちょうバブリ〜〜〜!遺産相続によるゴタゴタ劇場だけど、野々村真だとらなんか弱め。
結婚式会場とか、何もかもがゴテゴテだったんだなーと30年以上も前の日本の風景,風俗の俗悪な感じが出てる。
この手の作品だと伊丹十三には敵わないな。
竜雷太のお兄さんな高校時代の担任ををちらっと思い出した。

15. ジャン・コクトー『双頭の鷹
うつらうつらと睡魔と戦いながら観ていたのでアレですが、それでも相当良き。コクトーの美学と積み上げて、突き放して、のラストでうっとり。

16. マーク・ライデル『黄昏
80歳の誕生日を湖畔の別荘で過ごす熟年夫婦。ボケ気味で憔悴したじーさまぶりも、支える妻の優しさも巧すぎる流石のヘンリー・フォンダとキャサリン・ヘプバーン。
娘との確執や突然放り込まれる血のつながりのない孫のような少年によって少し歩み寄れた父娘の不器用さとで観ている間じゅう胃が痛む。それを和らげるような湖畔の景色が沁みる。

17. ダミアーノ・ダミアーニ『群盗荒野を裂く
クラウス・キンスキーの存在感薄すぎるし、モリコーネの曲もどっかで聴いた風のやる気ないのだし、ぼんやり観ていたもののラストのパンでなくダイナマイトを買え!というチュンチョの図にグッと持ってかれたわ!

18.ルネ・クレール『夜の騎士道
チャラ〜い、ジェラール・フィリップを堪能。どんどん展開してゆく場面がコミカルで軽快。身から出た錆まくり。
個人的には困り顔のジェラール・フィリップの方が断然好み。

19. 岡本喜八『戦国野郎
10年前に観てるの忘れてた。
加山雄三のシュッとスマート侍はもちろんのこと、しつこい中丸忠雄の存在感と死に様が壮絶。
ちょい役な様でいて決めるとこキメる天本英世も最高!

20. ジャスティン・カーゼル『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング
流刑地だったオーストラリアでのアイルランド人の底辺と警察との確執。根が深い憎しみと、毒母な教育とで生まれたモンスター。ジョージ・マッケイの肉体美と演技素晴らしいし、仄暗さとライティングにも凝った作りで画面も綺麗。
この監督さん、ニトラムと今作しかまだ観ていないけど、このやり場のないモンスター描くの上手いなー。
アメリカの穴の空いたケーキこと、ドーナツ食べたくなる。

21. ルイス・ブニュエル『哀しみのトリスターナ
名前からして哀しい響きのトリスターナ。身体的不自由と精神的不自由が入れ替わり、変態的愛憎飛び交う男と女たち。
後半にかけてのドヌーヴ様の素晴らしさったらない。フェルナンド・レイの屈折ジジイもいい感じぷんぷん。
謎な食べ物盛りだくさん出てくるけど、焼き菓子って言ってるカンノーリの皮のもっとパリパリしたみたいなの気になる。

Category: Movie

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2023.09.01 12:00 PM