3月にみた映画22本を振り返り。
絶賛見返し中のアキ・カウリスマキ。改めてみてもそのゆるさの中に込めたピリピリに効いたブラックさが堪りません。
『真夜中の虹』
炭鉱閉山から父の自殺、遺品のデカ車の幌が開かない...からの全てを無くしてゆく展開、差し入れの誕生日でない寄ってるケーキ、それぞれの人々との出会いからのテンポ、ラジオから流れる"悲壮"にラストの"Sateenkaaren tuolla puolen (Over the Rainbow)"の音楽使いもさすが天才的。
あのラストシーンはたまらんなぁ。
『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』
車売りつけるジャームッシュよりさらにオフビートなのに、そのとんがり頭と、靴のようにピリッとしたブラックさが絶妙で流石なカウリスマキさん。
ツンドラからニューヨーク、さらにはメキシコへと南へ進みまくるバンド御一行様。独裁マネが復活したら民主主義って！ラストまでこちらも抜かりない。

異次元の素晴らしさに魅了されてたクロード・ソーテも2本。
『すぎ去りし日の...』
スローモーションで遡ってゆくOPにフィリップ・サルドの音楽でのっけから最高に掴まれまくる。
不安定なピコリ、結婚式に走馬灯のシーンが素晴らしすぎた。ロミー・シュナイダーのクレージュのお衣装も可愛い。
『夕なぎ』
冒頭の音楽から素敵なはじまり。元カレと現恋人との間をどっちつかずでふわふわするロミー・シュナイダーに、嫉妬に怒り狂うイヴ・モンタンのヤバいおじさん感に震えながら、どっしり構える元カレ、サミー・フレー強い。
いかにもフランスな三角関係が楽しいし。まだプリプリなユペール様も拝めます！

ぶっ飛びな７０年代ものもいろいろ。
ジョン・ウォーターズ『マルチブル・マニアックス』(未ソフト化/U-NEXTで配信中です)
その昔、高校生の頃みたピンクフラミンゴはたまらなく衝撃だったけど、それ以前のディヴァインの映画を今観られる幸せ。
どこまでも悪趣味でお馬鹿なんだけど、まさかのロブストールで泣いた。ホルスト"火星"とともにお送りするあのシーンからのU.S.A!はまじジーザス。
アベル・フェラーラ『ドリラー・キラー』
"爆音で観ること！"って始まりから痺れる。
小汚いNYの売れない画家がポータブルバッテリーに出会ったら、シリアルキラーの出来上がりで、大家さんの素敵なウサギギフトあたりが加速してゆくスピードも、終わり方までキマってる。
物件も騒音以外は良さげ。監督自らめちゃくちゃ楽しんでそうなのも最高。

たまたまベトナム戦争ものも2本。
ロバート・アルトマン『ストリーマーズ』
フルメタル・ジャケット以前のマシュー・モディーン。
同じくベトナム戦争に行く前の若い兵士だけどこちらは派手さの全くない兵舎内だけの会話劇で、蝕まれていく心をお得意な群像で描いてて、観ているあいだ中胃が痛くなる。そんなヒリヒリした緊張感の中で自爆する軍曹に笑ってしまった。
紛れ込んできたカーライルが一番怖いよー！
マイケル・チミノ『ディアー・ハンター』
前半の幸せいっぱい、これから感たっぷり漂い"Can't Take My Eyes Off You"のシーンの素晴らしさ！からの、悪夢のベトナム戦争でボロボロになる仲間たち。
クリストファー・ウォーケンの狂気が哀しいし、改めて観てロシア系アメリカ人だったのか、と思うと余計に切ない。テーマ曲は永遠の名曲。

パオロ・ソレンティーノ『グレート・ビューティー』
全部は観ていないけど、観た中ではこれがダントツで好きな映画で再び鑑賞。
OPシーンから美しすぎる。空虚なパーティ暮らしで埋める止まらない列車遊び。死をより近くに感じ、若き日の思い出と幻想からの目覚め。
聖女様のシーンも強烈にすき。古都ローマで脈々と受け継がれている人々と暮らし、熱狂と必ずやってくる夜明け。なんて素晴らしい映画なんだろ。パオロ・ソレンティーノは最新作がNetflixなのよね...

こちらも間違いなく大好きな世界。ジャン・コクトーの『美女と野獣』
ディズニー以前にコクトーによるこの素晴らしき美意識。
迷い込むお城の手の燭台や顔ハメ、オルフェでもそうだったけど鏡や瞬間移動の表現も流石にうっとり。モノクロで、人力でここまでやれちゃうアーティスト魂よ。ジャン・マレーのキメキメな王子顔もゆるす！

3月にみた映画22本
1. アキ・カウリスマキ『真夜中の虹』
2. ジャン・コクトー『美女と野獣』
3. パオロ・ソレンティーノ『グレート・ビューティー』
4. 小津安二郎『彼岸花』
5. エットレ・スコーラ『ラ・ファミリア』(未ソフト化)
6. ジョン・ウォーターズ『マルチブル・マニアックス』(未ソフト化)
7. スティーヴ・ブシェミ『アニマル・ファクトリー』
8. ロバート・アルトマン『ストリーマーズ』
9. アキ・カウリスマキ『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』
10. クロード・ソーテ『すぎ去りし日の...』
11. メイベル・チャン『宋家の三姉妹』
12. グレゴリー・M・ウィルソン『隣の家の少女』
13. 岡本喜八『斬る』
14. アベル・フェラーラ『チャイナ・ガール』(未ソフト化)
15. カルロ・リッツァーニ『ルキノ・ヴィスコンティの世界』
16. ミア・ハンセン＝ラヴ『ベルイマン島にて』
17. クロード・ソーテ『夕なぎ』
18. ダニエル・ゲラー『ハレルヤ　レナード・コーエン　人生の旅路と夢』
19. マイケル・チミノ『ディアー・ハンター』
20. マーティン・スコセッシ『最後の誘惑』
21. アベル・フェラーラ『ドリラー・キラー』
22. ルネ・クレマン『狼は天使の匂い』